【狂犬病とは】予防接種は毎年必要なの?【獣医師監修】

狂犬病の予防接種が義務であることはわんちゃんの飼い主様なら皆様ご存知かと思います。
でも、日本で狂犬病って予防接種以外あまり聞かないですし、本当に必要なの?と思われる方もいるかもしれません。
そこで、狂犬病について少し詳しくご説明させていただきます。

そもそも狂犬病とは

狂犬病は、狂犬病ウィルスを保有するイヌ、ネコ、コウモリ等に咬まれたりひっかかれたりした際に感染する病気です。
「犬」という字が入っているので誤解しやすいですが、犬以外もウィルスを保有していますし、人も感染します。
というか、全ての哺乳類に感染します。

【症状】感染すると…

ヒトの場合

感染から発症までは一般的には1~2か月。
発熱や頭痛などから始まり、幻覚症状や有名な恐水発作(水を怖がる)などを起こしやがて死にいたります。
ここで大事なのは症状ではありません。発症すると致死率がほぼ100%だということです。
現在でも世界では年間数万人の方がこの病気で命を落としています。

犬の場合

狂犬病という名前からイメージできるよう凶暴になり、見境なく咬みつくようになったりします。
その後、全身が麻痺し、最終的には昏睡し呼吸もできなくなり死に至ります。
犬に限らず動物も致死率ほぼ100%です。

実際、日本で狂犬病は発生しているの?

日本での人の狂犬病発生は1956年、動物では1957年の猫ちゃんが最後です。
それから50年以上にわたり狂犬病の発生はありません。

日本は数少ない狂犬病清浄国です。
それがどれだけすごい事か、正直イメージが湧きませんよね?
農林水産大臣が指定する狂犬病の清浄国・地域は世界にこれだけの国があるのに
アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム のみです。(2013年7月時点)

とはいえ、油断は禁物です。
例えばお近く台湾は実は狂犬病清浄地域でした。
しかし2013年に野生動物の狂犬病が確認され、取扱いが変わってしまいました。

また、国内でも「輸入感染(国外で感染し、帰国後発症)」は起きています。
昭和45年 ネパールからの帰国者
平成18年 フィリピンからの帰国者
令和2年 フィリピンからの帰国者

が狂犬病を発症しています。
清浄国とはいえ、全く狂犬病とは無縁ではないのです。

狂犬病ワクチンとは?幾らするの?

ここまで怖い話をしてきましたが、狂犬病は予防できますのでご安心ください。
皆で予防すれば、仮に発生してもこの恐ろしい病気から愛犬はもちろん、人を守ることにもつながります。
わんちゃんには毎年狂犬病予防接種を受けさせてください。
動物と人との共生のために、必ず必要なことです。
これはお願いではなく、飼い主様の義務です。

ちなみに費用としては自治体によって微妙に違いますが当院の拠点がある大阪市では2,750円。
諸々含めると一般の動物病院で3,000円~4,000円が相場かなと思います。
尚、基本は自由診療ですので、必ず上記の範囲ではありません。
当院ではイベント内での実施が基本ということもあり、診察、接種込み1,500円で実施しております。

余談:ヒトの狂犬病ワクチン

海外に行く前等は事前に狂犬病ワクチンを接種することが大切です。
唾液にウイルスがたくさんいるので、半袖半ズボンを避けるのも大切なことですね。
感染している動物に咬まれても、直ちに傷口を洗い狂犬病ワクチンを接種することで発症を抑えられる可能性もあるようです。

接種しないとどうなる?

シンプルに予防ができないというところが一番のデメリットです。
病気から大切な家族を守れません。
ちなみに、割と現実的なデメリットとしては獣医師の判断で猶予された場合を除き、狂犬病予防接種を受けさせないと20万円以下の罰金の対象になります。
令和四年度は狂犬病予防法違反の検挙数は135件とのことです。

ワクチンの副反応が怖い…

コロナワクチンの副反応で大変だった方も多いでしょう。
狂犬病ワクチンももちろん、副作用がありますので接種後はきちんと様子をみたり、何かあれば動物病院へすぐ連れていける体制が重要です。
とはいえ、狂犬病ワクチンの副作用発現率は約0.0006%とかなり低いです。
決して無責任に安心してくださいとは言えませんが、数字上は比較的安全なワクチンとされています。
不安な場合はわんちゃんの状態について獣医師にご相談ください。
獣医師が実際にわんちゃんを診察し、接種が危険と判断した場合は狂犬病予防接種が猶予されることがあります。
証明書も発行され、狂犬病予防法違反!と言われることはありませんのでご安心ください。

最後に

最後に一番驚く話。
正確にわんちゃんの飼い主に課せられる義務の話をすると

  1. 生後91日以上のわんちゃんの登録
  2. 生後91日以上のわんちゃんは毎年狂犬病の予防接種
  3. 発行される鑑札、注射済票を首輪等につける

ところが、登録すらしていないわんちゃんもけっこういるのでは、と疑惑があります。
実際、登録していないことで検挙された事例もあります。
また、登録された犬と狂犬病の予防接種頭数の率を毎年厚生労働省が発表しています。
令和3年度で、なんと71%。全然たりない。

狂犬病は正直身近に感じられません。
でも、実は身近なんです。
動物病院は決して楽しい場所ではありませんが、大切な家族のために是非、年に一度の予防接種をお願いします。

当院では、狂犬病予防接種率の向上に向け、イベントを行っています。
予防接種の価格等も明確に表示しておりますので、お近くの方は是非いらしていただけますと幸いです。