「注射したら終わり」じゃない狂犬病予防。忘れがちな2つのポイント。【獣医師監修】
今年ももう秋ですね。
いわゆる狂犬病予防シーズンが終わってしばらくですが、今年の手続きはもう終了しましたか?
ここで「えっ?」となった方、確認してみてください。
狂犬病予防法に関わる義務として、平常時に必要なことは結構たくさんあります。
狂犬病予防法に規定されている義務(ざっくり)
- 狂犬病予防接種をうけさせること(第5条)
- 狂犬病予防接種をうけさせた犬に注射済票をつけること(第5条)
- 自治体に犬を登録すること(第4条)
- 鑑札を犬につけること(第4条)
- 引っ越しや飼い主の変更、死亡等の場合に届け出ること(第4条)
けっこう多いですねぇ。
5.は結構忘れている方が多いですが、ばっちり罰則の対象なので、早めにチェックしておきましょう。
今回ポイントなのは、全ての方が対象である2.と4.になります。
注射済票って?
当院もそうですが、動物病院で狂犬病予防接種を行うと「予防接種証明書」(体調等で打てない場合は別)が発行されます。
これらをもって市区町村指定の窓口へいき、550円支払って手続きをするともらえるのが「注射済票」です。
一部の病院や集合注射会場では手続きをスキップしてその場でもらえます。
郵送やオンラインでできる自治体もあるようです。
こんなもの
これを、飼い犬に着けておくことまでが義務です。
首輪とかにつけやすい感じになってます。
せっかく打ったのに罰則なんて笑えないので、是非つけておきましょう。
ちなみに毎年注射を打ちますが、毎年注射済票も変わります。
色から変わるので、去年のを着けていたら一目瞭然です。
尚、結構サイズが小さいです。
装着が義務ではありますが、飲み込んでしまうと危ないのでくれぐれもお気を付けください。
鑑札って?
わんちゃんを飼いはじめた際、お住まいの自治体に届け出をする必要があります。
その届出の際にもらえるのが、鑑札です。
こんなもの
この時の登録情報で自治体から注射の案内ハガキが届きますので、登録情報は忘れないようにしてくださいね。
狂犬病の手続きの際にわかりにくくなっちゃいますからね。
尚、こちらも飲み込まないよう注意です。
また、狂犬病予防法の特例に参加している自治体は、マイクロチップを鑑札の代わりにできます。
鑑札同様変更事項があれば届出が必要ですが、マイクロチップの変更手続き等はオンラインでできますし、価格もオンラインでやると少し安いです。
特例参加自治体や手続きについては環境省HPより
https://reg.mc.env.go.jp/owner/download(環境省)
動物愛護法の改正でペットショップ等で購入する場合はマイクロチップは多分入っているでしょう。
そうでなくても万一災害等で迷子になった時にそなえていれておきましょうね。
ちなみに、マイクロチップを入れるだけでは特に意味はありません。
装着した日から30日以内に環境大臣あてに登録の手続きをしてください。
あとは環境大臣から自治体に登録情報が送られるので、鑑札代わりにできます。
(既に鑑札が交付されている場合は返却が必要です。捨てないように。)
そんなん着けている人みたことない
ごもっとも…ごもっともなんですが、本当は義務なんです。
社団法人日本獣医師会さんが行われた2009年の調査は結構とんでもないものでした。
まず着用義務があることを知っている方は77%。意外と多め。
鑑札を着けている人はなんと19%。
注射済票にいたってはなんと13%。
特に関西は低い傾向にあるようで…知っていながら着けていないということが浮き彫りになっています。
うっかり罰則を受けることになるかもしれないですから、是非きちんとつけておいてほしいと思います。
義務が多すぎて面倒くさい
もちろん、気持ちはよくわかります。
ただ、大前提として狂犬病予防法は犬の為のみならず人間の為の法律だということを認識する必要があります。
狂犬病が全ての哺乳類に感染する、致死率100%、日本は数少ない清浄地域、なんてことは耳タコくらいいろんな動物病院が啓蒙していると思います。
でも、清浄地域になって実に70年近くたちますから、中々イメージがわきませんよね。
清浄地域でないアメリカ等でも普通に犬を飼育していますから、あまり脅威が伝わらなくても無理はありません。
ただ、日本やアジア地域と欧米の狂犬病には決定的な違いがあります。
過去日本で発生していた狂犬病は「都市型」であったのです。
狂犬病には感染経路で分けて「森林型」と「都市型」があります。
主に欧米で見られる「森林型」はその名の通り主な感染源が森林にいる野生動物です。
もちろん、狂犬病ワクチンは犬を守るため当然必要ですが、森林にいる全ての動物を予防することは現実的じゃないので、清浄地域にはなり得えません。
ただ、森林の中に住んでいるわけでない限り、そんなに暴露機会も多くなく、必然飼育されている犬のリスクも低いので日本ほど厳しくないのだと思われます。
一方、過去の日本やアジアでみられる「都市型」は主にそのあたりにいる犬が主な感染源です。
犬の生息域(野犬や飼い犬)も「都市型」の名の通り密集していますので一定地域に予防していない犬が一定数いて、たまたま感染すると近隣の犬や人に爆発的に感染が拡大する可能性が否定できません。
犬の散歩をしていると知らない人でも撫でてくれたりしますし、イベントやドッグランで他の犬とも楽しく交流していますが、一度清浄地域じゃなくなればリスクが大きすぎてとてもじゃないけどそんな事できません。
実際にフィリピンやタイなどでは日本の感覚で犬に触ると非常にリスクが高く、様々な方が注意喚起をしています。
その安全な、気軽に犬と触れ合える環境を守るためには、犬の狂犬病予防さえしっかりしておけば、ある程度の安全性が担保できるということなのです。
今、犬と気軽に触れ合えるこの幸せを守る為には、飼い主様みなさんがしっかりと義務を果たしていただく必要があります。
その為、義務を果たさない人は摘発され、罰則を受けることになっています。
残念ながら、狂犬病予防接種率ですら100%にはまだ遠いです。
少なくとも、義務を果たしていない飼い主様が一定数いらっしゃいます。
当院では、これからも狂犬病予防接種率100%、定期健康診断率100%を目指し、飼い主様との犬の幸せが続くよう様々な取り組みを行って参ります。
注射済票や鑑札は義務を果たしているかどうか証明する為に必要です。
是非、しっかりと装着していただけますようお願いいたします。