【重要】お薬の誤食にご注意を 〜美味しいお薬の落とし穴〜

ファミリー動物病院 > コラム > 【重要】お薬の誤食にご注意を 〜美味しいお薬の落とし穴〜

近年、わんちゃんに処方されるお薬の形状やフレーバーは大きく進化しています。
かつては苦い錠剤を無理に飲ませなければならなかった時代から、今ではおやつのように嗜好性が高く、犬が自ら喜んで口にするチュアブルタイプやフレーバー錠が一般的になりつつあります。
こうした進化は、飼い主さま・動物たち双方にとって苦しみの少ない病気の治療を実現する大きな一歩です。
しかしその一方で、“薬であることを忘れてしまうほどおいしい”がゆえに、お薬の誤食・過量摂取という新たなリスクも浮き彫りになってきました。

実際に最近、同居犬に処方されたアレルギーのお薬を大量に誤って食べてしまった犬が死亡する事故が報告され、メーカーから注意喚起が当院にも届いています。
本コラムでは、こうした事故を未然に防ぐためのポイントと、「安全」と「快適」を両立するための服薬管理についてご案内いたします。

◆大量誤食事故の背景

今回事故が発生したお薬は犬のアレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎のかゆみを抑えるお薬として広く使われています。
効果が早く、苦味も少ないことから、チュアブル錠*を好む犬も多く、長期的な治療において非常に有用なお薬です。
ところが今回は、何らかの理由でわんちゃんがそのお薬を大量に食べてしまい、死亡してしまいました。

このような事故は、決して他人事ではありません。
とくに、ビーフやチキンなどのフレーバー付きの薬剤は、おやつと勘違いして袋や箱を破って食べてしまうケースがあり得ます。
今回の事故ももしかしたらそういうケースだったのかもしれません。

*チュアブル錠…噛んで服用することを前提にしているお薬の事です。不味ければ当然食べてくれませんから、動物にとっておいしいお薬であることが殆どです。

◆ 当院でも処方している“おいしいお薬”のリスク

当院でも、以下のような嗜好性の高い内服薬・予防薬を扱っております。

  • ビーフフレーバーの予防薬錠剤
  • 大豆ミートを使用したチュアブルタイプの予防薬

これらは、薬を無理にわんちゃんの口へ押し込むストレスから解放され、飼い主さまとわんちゃんの信頼関係を守るためにも非常に有用な手段です。
しかし同時に、「薬」であることを忘れてしまうほどの嗜好性が、思わぬ事故につながる恐れもあるのです。

◆ なぜ”おいしいお薬”をつくるの?

ご経験のある飼い主様はたくさんいらっしゃると思いますが、動物への投薬は毎日の大仕事です。
動物はなぜその薬が必要なのかを理解してくれません。
当然拒絶されることも多く、苦労されている状況を動物病院ではよく伺います。

そんな中、たとえば、

  • おやつ感覚で薬を食べてくれる
  • 飼い主が無理やり口をこじ開ける必要がない
  • 飲み残しや吐き出しがない

こうした環境は、犬にとっても飼い主さまにとっても理想的です。
しかし「楽しく薬を飲む」ためには、その裏で「正しい管理」「安全な保管」「過量リスクの理解」が不可欠であり、ここが抜けてしまうと、理想的な投薬が重大事故に転じるという皮肉な結果を招いてしまいます。

◆ 飼い主さまにお願いしたい4つのこと

1. 薬はおやつではありません。必ず“薬として”扱ってください。

見た目がおやつに似ているものは特に、必ず手の届かない場所に保管してください。冷蔵庫の上や鍵付きの棚などが理想です。

2. 薬の管理は“人間用の薬”と同じ感覚で。

小児がいるご家庭と同じように、量や服用タイミングを正確に記録し、過剰投与が起きないようにしてください。

3. 飲ませた後は“残っていないか”確認を。

口に入れた後、こっそり床に吐き出しているケースもあります。きちんと飲み込んだか最後まで見届けてください。

4. 誤食した可能性がある場合は、すぐご連絡ください。

何錠飲んだかわからない、薬の袋が破かれていた――
そんなときはすぐに動物病院へご連絡を。時間との勝負です。

◆ お薬の正しい保管方法

  • アルミシートやパウチのまま保管し、バラで放置しない
  • 空腹時に手の届く場所(カバン、テーブル、床など)に放置しない
  • 旅行や通院時は、密封容器やチャック袋に入れて持ち歩く
  • 薬の保管場所を家族全員で共有し、誤って二重投与されないようにする

◆ まとめ

嗜好性の高い薬は、犬にとっても飼い主さまにとっても素晴らしい選択肢です。
しかし、その“おいしさ”の裏にあるリスクを知らずに使ってしまうと、命にかかわる重大事故を引き起こすこともあります。

「飲ませやすさ」と「安全性」を両立させてこそ、本当の意味での理想の投薬です。

どうか今一度、おうちでのお薬の保管・管理方法を見直してみてください。
そして当院で処方したお薬に何かご不安な点がありましたら、いつでもお気軽に当院へご相談ください。

コラム一覧へ戻る