最近、飼い主様とお話をしていると、「毎日手作りしています」「生のお肉をあげています」といった声を耳にする機会が増えてきました。
ペットフードを与えている方からすると「本当に大丈夫なのだろうか」と不安に思うかもしれません。
本コラムでは、犬猫にとって適切な食事とは何かを、動物病院の視点からわかりやすく整理してご紹介します。
結論:毎日の主食は総合栄養食のペットフードを適量与えることを推奨します
まず結論を申し上げると、動物病院として推奨するのは、総合栄養食のペットフードを適量与えることです。
以下でその理由と、手作り食・生食のリスク、上手な取り入れ方について詳しく説明します。
犬と猫の食性の違い
犬と猫は人と同じ哺乳類ですが、食性や栄養要求は大きく異なります。
- 犬:分類上は食肉目ですが、雑食性の傾向があり、穀類や植物性食品もある程度消化できます。
- 猫:完全肉食動物です。タンパク質や特定の必須アミノ酸(タウリンなど)、動物性脂肪に依存しているため、人間や犬とは必要栄養が異なります。
人間と同じ「雑食」であっても、体の構造や代謝は異なるため、人間向けの食事をそのまま与えると不足や過剰が生じることがあります。
玉ねぎなど食べられないものもたくさんあります。
手作り食はどう考えるべきか
手作り食は愛情がこもった素敵な選択肢です。
ただし、毎日の主食として継続する場合には注意が必要です。
ペットに必要な栄養素は多岐にわたり、年齢、体重、活動量、健康状態によって必要量は変わります。
特にカルシウムやビタミン、微量元素のバランスは難しく、偏りは時間をかけて健康問題となって現れます。
手作りを取り入れたい場合のポイント:
- 主食は総合栄養食にし、手作りはトッピングやおやつとして少量取り入れる。
- 獣医師や動物栄養学の専門家に相談し、レシピを確認する。
- 特定の疾患(腎臓病、肝疾患、肥満など)がある場合は、専門の食事管理が必要。
生肉・生魚(生食)は安全か?
生肉や生魚を与えることに関しては近年関心が高まっていますが、現時点では日常的な生食は推奨しません。
その理由は以下の通りです。
- サルモネラや病原性大腸菌などの細菌による汚染リスクがある。
- 寄生虫の感染リスクがある。
- 家庭での衛生管理は不完全になりやすく、感染リスクがある。
- 動物用の生食基準は今のところない。
どうしても与えたい場合は、必ず加熱処理を行い、少量をおやつとして与えるのが現実的な対応です。
将来的に動物用生食の安全基準が整えば状況は変わるかもしれませんが、現状では慎重な判断が必要です。
余談ですが、生食の件は少しホットな話題でもあります。
日経の記事によると、世界では生食のぺットフードなるものが最近人気だそうで、その市場は今後10年で1.5倍の規模に達すると見込まれています。
ただ、薬剤耐性菌などのリスクも散見されており、現状お勧めできる選択肢でもないような印象です。
参考:日経ぺージ
(クリックで別のページが開きます。)
なぜ総合栄養食がベストなのか
「総合栄養食」とは、製品単体(そのフードと水)で犬猫が健康維持や成長に必要な栄養素を満たせるように設計され、所定の試験や分析をクリアした製品です。
総合栄養食であることを名乗るためには、ぺットフード公正取引協議会が定める基準を満たす必要があり、さらにペットフード安全法による規制対象でもあります。
※ぺットフード安全法は総合栄養食以外のぺットフードも対象にしています。
総合栄養食の長所:
- 栄養バランスが整っており、日々の健康維持に適している。
- 品質管理や安全性の基準が一定程度保証されている。
- 各メーカーが嗜好性・消化性を考慮して製品改良を続けているため、食いつきの問題を解決しやすい。
実践的なアドバイス
飼い主様が毎日の食事で気を付けるべきポイントをまとめます。
- まずは総合栄養食を基本にする。
年齢や体重、健康状態に合わせた製品を選び、パッケージの給与量を参考に適量を守る。 - 体重管理を定期的に行う。
体重の増減は栄養状態の変化を示す重要なサインです。 - 手作りやトッピングは補助的に。
栄養バランスを崩さないよう少量に留める。 - 生食等はさせない。
フード以外のものをあげる際は加熱処理や衛生管理を徹底し、人間のご飯は食べさせない。 - 持病がある場合は療法食を検討する。
腎臓病や肝疾患、皮膚疾患などでは専用の食事が必要になることがあります。こちらは必ず獣医師に相談してください。 - 疑問があれば動物病院に相談を。
栄養相談や体重管理、アレルギー対応など、獣医師や看護師と連携して最適な食事を決めましょう。
まとめ
手作り食や生食には魅力がありますが、栄養バランスの確保や衛生面のリスクを考えると、毎日の主食としては総合栄養食のペットフードを基本とすることが最も安全で確実です。
手作りはトッピングや特別な日のごちそうとして楽しみつつ、日常の栄養は信頼できるフードに頼るのが現実的な選択です。
ペットの健康は日々の食事からつくられます。
よかれと思った食事で体調を崩すことのないよう、くれぐれもご注意くださいね。
当院のフードについて
当院では、「VET’S ADVICE」というペットフードを製造し、販売しております。
このフードは国産原料・国内製造、AFFCO基準の栄養成分に準拠、乳酸菌の配合など腸活にも力をいれている、など様々なこだわりをもっています。
世の中にペットフードはたくさんあり、選ぶのが大変かと思いますが、価格はできるだけ抑え、必要十分を満たすこだわりのあるフードとして、大手ECサイトを中心に販売させていただいております。
また、当該フードのご購入者様には無料で当院獣医師が相談をお受けするサービス⋆も提供しております。
小さなサイズのご用意もしておりますので、是非お試しいただけると幸いです。
⋆わんちゃんの食餌に限らず何でもご相談いただくことが可能です。ただし、あくまでも診察ではなく相談であるため、個別の疾患についての質問などお答えが難しい場合がございます。