【注意!】SFTSで動物の死亡例が出ています。

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春から秋にかけて、私たち獣医療現場で最も警戒している感染症のひとつが「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」です。 SFTSは主にウィルスを保有するマダニに刺されることで感染するダニ媒介性感染症で、人や犬、猫などの哺乳動物に感染し、重篤な症状を引き起こすことがあります。

犬や猫から人にもうつる

今年、動物病院業界では非常に話題になったニュースがありました。 ひとつは、SFTSに感染したと思われる三重県の獣医師さんが亡くなったという痛ましい出来事です。 この獣医師さんにはマダニにかまれた形跡がなく、かつSFTSにかかった猫ちゃんの治療にあたっていたということです。 動物から人への感染例は過去にもあり、知識としては動物病院の皆さんは知ってはいると思いますが、改めてその恐ろしさを実感した形です。 獣医師会からも本件事例の共有が行われました。 もうひとつは、ペットの猫がSFTSで死亡した事例の報道です。 鳥取県で暮らしていた猫ちゃんが食欲不振で病院に行き、入院していたのですが亡くなってしまいました。 後に検査を実施したところ、SFTSに感染していたことがわかりました。 マダニは珍しくもなんともない虫ですが、こんな風に命に関わる病気をもってくることがあります。 我々動物病院はもちろん、飼い主様も是非お気をつけいただきたいです。

日本国内の感染状況と致死率

SFTSは国内で初めて確認された2013年に感染症法の四類感染症に指定され、国によるサーベイランス(調査・監視)が行われています。 今年国立健康危機管理研究機構が発表したデータでは、2013年以降届出があったもので本年4月30日時点、1071件の報告があり、うち死亡例が117例あります。 実に10%以上の致命率と結構な数字です。 尚、感染者は主に高齢の方が多いです。 詳しい解説は人間のお医者さんに任せることにしますが、子どもさんなんかも危険かもしれません。 また、わんちゃんの致命率は約30%、猫ちゃんでは60~70%といわれています。 人よりも死亡率が高いため、より注意する必要があります。

動物さんと飼い主様を守るSFTS・マダニ対策

先に猫ちゃんの対策をお話しておくと、一番わかりやすいのは完全室内飼いです。 もちろん、飼い主様にくっついてマダニが屋内に入ってくるなどの可能性は否定できませんが、基本的にマダニは森林や草むら、公園の植え込み、河川敷など屋外にいますので、感染機会はぐっと減らせます。 わんちゃんについては少し考えるべきかもしれません。 前述の通り、マダニは犬が好んで遊ぶ場所に多く生息しています。 特に春から秋にかけて活発に活動し、人間の目では見つけにくい大きさで、知らぬ間に犬や人に取りつき吸血します。 そこで、以下のような日常でできる対策が大切になります。

1.マダニがいそうな場所を避ける

いきなり当たり前の話ですみません。が、非常に重要です。 マダニのいる、雑草の多い場所や山道、草地などにはできるだけ近づかないようにしましょう。もし、行く際は、犬も人もなるべく肌を露出しない服装にしましょう。 犬の散歩コースも整備された道を選ぶのが安心です。 最近は犬用にもマダニ対策の服が販売されていたりします。 また、虫よけも動物用のものがあるので使用してみるのも良いかもしれません。 (人用のものは犬に使用しないでください。)

2.帰宅後のチェック

散歩後は犬の体表、特に耳の裏、首まわり、脇の下、足の付け根などを丁寧に触ってマダニの付着がないか確認しましょう。 見つけた場合、無理に引き抜くのではなく、動物病院での処置をおすすめします。 無理に引き抜くとマダニの口が体内に残ったり、体液が動物の体内に逆流して感染リスクを高めることにもなります。

3.ノミ・マダニ予防薬の定期投与

そして大切なことですが、動物用のノミ・マダニ予防薬の継続使用です。 これらは直接的なSFTS予防ではないですが、少なくともノミやマダニの継続的な寄生を防ぐことができます。 厚生労働省のQAでも、日常的な対策としてマダニ駆除剤の投与について獣医師が指導徹底することとされています。 尚、ノミダニ予防薬にはたくさんの種類がありますが、原則的には動物病院で処方されるものをお勧めします。 ホームセンター等で購入できるものは当然成分が異なりますし、当院としてもその予防効果については詳しくわかりません。 一定の効果はあるとは思うのですが、動物病院の薬のようにほぼ100%の駆除率や寄生予防効果まではないように思います。

最後に──「見えない脅威」に備えるために

マダニやSFTSウイルスは目に見えません。しかし、その脅威は確実に、そして年々身近なものになっています。感染症というと「人だけの話」と思われがちですが、わんちゃんや猫ちゃんが苦しむこともあり、また動物達から飼い主様へ感染する可能性もある、と今年の事例がはっきりと示しています。 大切な家族の一員である動物たちを守ることは、同時にご自身の健康を守ることでもあります。ノミ・マダニ予防薬は、単なる「虫除け」ではなく、もはやマストの健康管理かもしれません。 お散歩が楽しい季節だからこそ、しっかりと予防をして、安全で健やかな毎日を過ごしましょう。 当院では、飼い主様のお近くまで行き、診察・予防薬処方を行っています。 もちろん、ノミダニ予防薬の処方も行っております。 夏・秋もイベントが追加されましたので、是非お気軽にご来場ください。
   

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