偽物のノミダニ薬について~個人輸入はご注意ください~

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「ネットで安く手に入るから」「同じ成分だから大丈夫そう」──そんな理由で、海外からペット用の医薬品を個人輸入する方が増えています。しかし、その選択が、愛する動物の命を危険にさらす可能性があることをご存知でしょうか?

私たち動物病院では、日々ペットの健康を守る立場として、「正規のルートで安全な薬を使うことの大切さ」をお伝えしています。

医薬品はもちろん一定の安全検証がされていますが、それらは全て「専門知識に基づく正しい利用方法」での安全性を担保するものです。
一般流通している、一部の作用の弱いものも含め、動物の状況と薬の性質をきちんと理解して使用することが重要です。

また、先日イギリスでは政府から飼い主向けの緊急警告が出ていました。

英国政府が警鐘──偽薬に有毒成分

今年、偽のノミダニ薬が流通していたことがイギリスで発覚し、政府が緊急に警告を出す事態になりました。
さらに恐ろしいことにはこの偽薬には「ピリミホスメチル」という農薬成分が含まれており、それを摂取した猫が中毒症状を起こしました。

この偽薬は、正規品に酷似したパッケージで販売されており、一見しただけでは見分けがつきません。
価格の安さに惹かれて購入した消費者の多くが、「本物」だと信じ込んで使用していたのです。
尚、購入経路はオンラインでした。

※この化学物質は害虫駆除に使用される農薬であり、猫にとっても有害な成分です。もちろん農薬ですから、ペットフードなどの原材料によっては微量に残存する可能性はありますが、日本国内においては含有量に規制が設けられています。

偽物の特徴と見分け方

イギリスで確認された偽薬には以下のような特徴があったようです。

  • パッケージにスペルミスやフォントの不自然さがある

  • パッケージから溶剤のような異臭がする

  • 梱包が粗悪

  • 通常価格よりも極端に安価

日本でも、国内流通している処方薬を、診察なしに海外から個人輸入されている方がいますが、このような偽薬が紛れていないという保証はないかと思います。

安さや利便性を理由に手を出す前に、「本当に信頼できる製品なのか」「動物の体に安全なのか」を慎重に判断する必要があります。

例えば本件のように予防薬であれば、それで体調を崩すのは本末転倒です。

そして最も大事なことですが、今回のイギリスのケースにおいても、猫が中毒症状を起こしたことが切欠で為に飼い主様が調査を依頼し、問題が発覚したということです。
つまり、体調を崩して初めて偽物であることに気が付いた可能性があります。

日本国内で認可されていない薬の使用リスクも

偽薬でなくとも、海外製の動物用医薬品の中には、日本国内では未承認の成分が含まれている場合があります。つまり、日本の法律で安全性が確認されていないものもあり、それを自己責任で使うというのは極めて危険です。

また、同じ名前や見た目でも、日本国内で流通している製品とは濃度や投与量が異なることがあります。とくに猫や小型犬にとっては、わずかな誤差が致命的になりかねません。

さらに、使用中に何かトラブルが起きた際、動物病院が適切な対応ができないケースもあります。
使用履歴がはっきりせず、有効成分も不明となると、治療そのものが難航することもあります。

健康被害だけでなく、法律違反の可能性も

医薬品医療機器等法(旧薬事法)では、動物用医薬品を無許可で販売・譲渡することは違法とされています。
輸入方法が適正であっても、その後人に譲渡するなどすれば当然違法になります。

また、医薬品の成分によっては違法な所持・使用に該当する可能性もあるため、十分にご注意ください。

安全な医薬品を使うために、私たちができること

動物病院では、原則、国家の認可を受けた安全な製品を取り扱っています。
動物種・体重・生活環境・持病などをふまえて、最も適切な用量・用法で処方を行い、副作用や相互作用についても十分に確認を行います。
それは専門的な知識をもった獣医師だからこそできることです。

「高いから」「待ち時間が面倒だから」という理由でインターネット購入に走る前に、ぜひ一度、動物病院にご相談ください。
最適な選択を一緒に考えることも、動物病院のお仕事です。

当院では、少しでも利便性の向上がはかれるよう予防医療のイベントも実施しております。
お近くの会場があれば、是非ご活用ください。

最後に──愛する命を守るのは「正しい情報と判断」

私たちが診ている動物たちは、「どの薬を選ぶか」を自分で決めることはできません。
だからこそ、飼い主である皆様の選択が、動物の未来を大きく左右します。

「安く買えた」「すぐ届いた」という利便性の裏に、命に関わるリスクが隠れているかもしれません。

事実、人体用の医薬品では日本国内においても偽物の薬が見つかっております。

大切な家族を守るために──
医薬品は必ず、信頼できる獣医師と相談のうえ、正規のルートで入手しましょう。

ご不明な点やご不安なことがございましたら、いつでもお気軽に当院までご相談ください。

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