犬は虫歯になりにくいのに、なぜ歯周病になりやすいの?

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「犬は虫歯になりにくい」と聞いて、安心していませんか?

確かに、人間と比べると犬は虫歯にはなりにくい動物です。しかしその一方で、犬は歯周病にかかりやすいという大きな落とし穴があります。

今回はその理由と、予防の大切さについて解説していきます。

■ 犬が虫歯になりにくい理由

人間の口の中は弱酸性で、虫歯菌(ミュータンス菌など)が酸を出し、歯を溶かすことで虫歯が進行します。
一方、犬の唾液はアルカリ性です。この環境では虫歯菌が増えにくいため、虫歯にはなりにくいと言われています。

「うちの子は虫歯の心配がないなら大丈夫!」と思いたいところですが、実はここに大きな落とし穴があります。

■ 犬が歯周病になりやすい理由

アルカリ性の唾液には、歯垢を歯石に変えやすい性質があります。

  • 歯垢(プラーク):細菌のかたまり。柔らかく、歯みがきで落とせる。

  • 歯石:歯垢が唾液の成分で石灰化したもの。歯に硬くこびりつき、歯みがきでは取れない。

犬は人間より歯石の形成スピードが速く、なんと人間の約5倍のスピード(3~5日)で歯石になってしまうと言われています。そのため、日々のケアを怠ると、あっという間に歯周病が進行してしまうのです。

■ 歯周病とはどんな病気?

歯周病は、歯そのものではなく「歯茎」や「歯を支える骨(歯槽骨)」に炎症が起きる病気です。

初期には歯茎が赤く腫れたり、出血する程度ですが、進行すると…

  • 口臭が強くなる

  • 歯がぐらつく、抜ける

  • 顎の骨が溶ける

  • 痛くて食べられなくなる

といった深刻な症状が出てきます。

さらに恐ろしいのは、口の中の細菌が血流に乗って全身に広がること。心臓・肝臓・腎臓などの臓器に悪影響を及ぼすことが知られています。

実際にアメリカの動物病院協会(AAHA)の報告では、2歳までに約80%の犬が歯周病を発症しているとされています。つまり、歯周病は「高齢犬の病気」ではなく、若いころから注意が必要なのです。

■ 歯周病になりやすい犬種

特に注意が必要なのは小型犬です。ダックスフンドやトイ・プードル、パピヨン、ヨークシャー・テリアなどは歯周病の子が比較的多い印象です。

また、短頭種(パグ、シー・ズー、フレンチブルドッグなど)は歯並びが悪い子が多く、きれいに歯磨きしにくいので注意が必要です。

■ ご家庭でできる歯周病予防

歯周病を防ぐ一番の方法は、毎日の歯みがきです。

  • 歯ブラシに慣れていない犬は、まずガーゼで歯を拭くことから始めましょう。

  • 犬用歯みがきペーストを使うと、嫌がらずにケアできることもあります。

  • 少しずつ慣らしていき、最終的には歯ブラシで奥歯まで磨けるようにするのが理想です。

歯みがきが難しい場合には、

  • デンタルガム

  • デンタルジェルやスプレー

  • デンタルサプリメント

などの補助用品も活用するとよいでしょう。ただし、歯みがきの代わりにはならないので注意が必要です。

■ 動物病院でのケアも大切

すでに歯石がついてしまった場合、家庭で取り除くことはできません。無理に削ろうとすると歯や歯茎を傷つけてしまうこともあります。

そのため、動物病院での歯科検診や歯石除去(スケーリング)が欠かせません。

  • 定期的な口腔チェック

  • 超音波スケーラーによる歯石除去

  • 必要に応じた抜歯や治療

を行うことで、歯周病の進行を防ぎ、健康な口内環境を維持することができます。

尚、往診専門である当院ではスケーリングは行っておりません。

料金等は近隣の病院様へご確認いただければと存じます。

■ 最後に

「歯みがきは難しいからつい後回しにしてしまう…」という声をよく聞きます。ですが、歯周病は放っておくと全身に悪影響を及ぼす恐ろしい病気です。
逆に言えば、毎日のケアと定期的な病院チェックで確実に防げる病気でもあります。

愛犬の健康寿命を延ばすために、ぜひ今日から口腔ケアを習慣にしてみてください。

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