狂犬病予防法改正について
令和7年11月、厚生労働省より狂犬病予防法に関連する施行規則の改正方針が示されました。
狂犬病予防法および関連する施行令・施行規則はこれまでも細かく改正が続いてきましたが、今回の改正方針は狂犬病予防接種期間にも関係する内容でした。
本コラムでは、今回の改正予定内容や背景、飼い主様への影響、今後のスケジュール、さらには懸念される点まで、できるかぎり分かりやすくご紹介します。
※本コラムの執筆は法律の専門家ではありません。できる限り正確な内容を心がけてはおりますが、あくまでも参考程度にご利用頂き、不明な点はご自身でお調べいただくか、管轄行政機関または法律の専門家にご確認ください。
■ はじめに:用語整理
まず最初に、本コラムでは次のように用語を扱っています。
- 「狂犬病予防法」…狂犬病予防法本体・施行令・施行規則を総称している。
- 今回の改正対象は、正確には 施行規則の改正
- 施行令・施行規則は過去にも何度も細かく見直されている(今年も改正ありました。)
狂犬病は致死率ほぼ100%という極めて危険な感染症で、海外では依然として犬や野生動物を中心に流行しています。
日本は清浄国として長く維持されていますが、海外から持ち込まれるリスクは常に存在するため、予防接種制度の維持は非常に重要です。
■ 今回は何が変わるの?
飼い主の皆さんにとって最も大きな変更点は、接種すべき時期が4〜6月に固定されなくなる方針が示されたことです。
年1回接種の義務自体は変わりませんが、現状では次のように“時期が明確に規定”されています。
▼ 狂犬病予防法施行規則(該当条文)
(予防注射の時期)
第十一条 生後九十一日以上の犬(次項に規定する犬であつて、三月二日から六月三十日までの間に所有されるに至つたものを除く。)の所有者は、法第五条第一項の規定により、その犬について、狂犬病の予防注射を四月一日から六月三十日までの間に一回受けさせなければならない。
ただし、三月二日以降において既に狂犬病の予防注射を受けた犬については、この限りでない。2 生後九十一日以上の犬であつて、三月二日(一月一日から五月三十一日までの間にその犬を所有するに至つた場合においては、前年の三月二日)以降に狂犬病の予防注射を受けていないもの又は受けたかどうか明らかでないものを所有するに至つた者は、法第五条第一項の規定により、その犬について、その犬を所有するに至つた日から三十日以内に狂犬病の予防注射を受けさせなければならない。
3 前二項の場合において、狂犬病の予防注射を受けさせなければならない犬を所有者以外の者が管理するときは、第一項中「所有される」とあるのは「管理される」と、「所有者」とあるのは「管理者」と、前項中「所有する」とあるのは「管理する」と、それぞれ読み替えるものとする。
このように、明確に予防接種期間は「4〜6月」であることが指定されているのです。
意外と知られていませんが、厳密には4〜6月以外に狂犬病ワクチンを打つと法律的には違反になります。
とはいえ実際にはそのことで罰則を受けることはほとんどなく、事実上形骸化している規定といえます。
(大阪市に聞いたところ、期間外でも接種していさえすれば罰則を受けた話は聞いたことないらしいです。多分ないと思います。)
それでも、以下のように不便なことや行政内部の問題もあったようです。
- 春の動物病院が毎年「予防注射ラッシュ」で激混みになる
- 自治体も年度初めで忙しい中、注射済票の発行業務が一気に集中する
※予防接種をまったく行わない場合は当然罰則対象です。警察庁によれば、令和6年の狂犬病予防法違反による検挙件数は162件とのことです。
■ どんな影響が出そう?
私見ですが、改正直後に劇的な実務変化が起こることはないと予想されます。
これまで4月に打っていた方は来年も同じタイミングで接種すると思われ、無理に時期を変更する必要もありません。
(フィラリア等もありますしね)
しかし長期的には、混合ワクチンのように誕生日を基準に毎年の接種日を固定する飼い方が広まる可能性があります。
これにより飼い主様側の管理はしやすくなる一方、自治体の通知方法や集合注射の運用には見直しが必要になるでしょう。
▼ 集合注射の今後
自治体アンケート(2024年)では、現在集合注射を実施している自治体は約9割、改正後も集合注射を続ける自治体は約6割と回答されています。
つまり、改正後は集合注射を取りやめる自治体が増える可能性があります。
■ 施行時期はいつ?
| 内容 | 日付(予定) |
|---|---|
| 公布予定日 | 令和8年4月1日 |
| 施行予定日 | 令和9年4月1日 |
施行は再来年からの予定ですが、接種義務そのものは変わらないため、慌てる必要はありません。
というか、毎年接種することも手続きも変わらないので、特段気にすることもないような気がします。
■ ちょっとした心配:通知が来なくなる?
これまで自治体は、6月を過ぎても接種が確認できない犬に「早めに接種してください」と通知を送っていました。
(多分ほとんどの自治体が)
しかし時期の縛りが撤廃されれば、これらの通知は発信されなくなる可能性があります。
すると、以下のような問題が生じる恐れがあります。
- 「うっかり接種忘れ」が増える
- 気づいたら何年も接種していなかった、という事態
ただでさえ接種率が100%に届かない現状を踏まえると、改正後も行政・獣医師会・飼い主様の三者でうまく連携し、接種率を維持・向上させる工夫が求められているように思います。
■ まとめ
今回の改正の要点は、接種時期の固定を撤廃し、柔軟な運用を可能にするという点です。
飼い主様にとっては自由度が増す一方、これまで自治体からの時期通知が減る可能性があるため、接種忘れには十分注意する必要があります。
狂犬病は発症すればほぼ助からない非常に危険な病気です。
改正後も、年1回の予防接種を忘れず確実に行うことが、社会全体の安全を守ることにつながります。
当院のイベントも是非活用頂き、わんちゃんとの楽しい毎日をお過ごしください。
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