獣医師が教える「ワクチン接種後の過ごし方」のお話

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ワクチン接種後の過ごし方について

犬や猫にとってワクチン接種は、感染症から大切な命を守るために欠かせない予防医療のひとつです。
特に子犬・子猫の時期は免疫力が不安定なため、定期的なワクチンプログラムをしっかり守ることが将来の健康に直結します。
しかし、ワクチンには副反応などの可能性もあります。
本コラムでは、接種当日の注意点から翌日以降の過ごし方、異常が出たときの対応まで、飼い主さまに知っていただきたいポイントを整理してご紹介します。

1. ワクチン接種後に起こりうる反応

ワクチンは病気を防ぐために必要なものですが、体にとっては「異物」として認識されるため、まれに副反応(副作用)が出ることがあります。代表的なものは次の通りです。

  • 一時的な発熱
     体がワクチンに反応し、免疫を作ろうとする過程で軽い発熱を起こすことがあります。

  • 元気消失や食欲不振
     半日から1日程度、少しぐったりしていたり食欲が落ちたりすることがあります。

  • 注射部位の腫れや痛み
     接種した場所にしこりのような腫れが出ることがありますが、通常は数日以内に軽快します。

  • アレルギー反応(まれだが注意が必要)
     顔の腫れ、じんましん、呼吸困難、嘔吐・下痢などが急に出ることがあります。

  • アナフィラキシー反応
     アレルギー反応によって、複数の臓器に強い症状(呼吸困難、血圧低下)があらわれることがあります。すぐに病院に行くべき症状です。接種後すぐ発生することが多いです。

こうした反応の多くは自然に落ち着きますが、重度のアレルギー反応は命に関わる可能性があるため、特に接種後15~30分程度は病院近くで安静にし、異変がないかを観察することが推奨されます。

2. 接種当日の過ごし方

ワクチンを打った日は、普段と同じように過ごしてよい部分と、控えるべき行動があります。

  • 安静第一
     当日は無理に運動させず、散歩も短時間・軽めにとどめましょう。興奮や激しい運動は体に負担をかけ、免疫形成にも悪影響を与える可能性があります。

  • 入浴やシャンプーは控える
     ワクチン接種当日の入浴は避けましょう。体が疲れているところに体温変化や湿気の刺激が加わると、体調を崩すきっかけになります。

  • 新しい環境や人混みは避ける
     免疫がしっかりつくまでには数日から数週間かかります。接種直後にドッグランやペットホテルに行くことはおすすめできません。

  • 食事は様子を見ながら
     普段通り食欲があれば問題ありませんが、もし元気がない様子があれば少量にして様子を見ても大丈夫です。

3. 翌日以降の注意点

翌日以降は大きな制限はありませんが、次の点を心がけると安心です。

  • 体調の観察を続ける
     接種から2〜3日は、食欲・元気・便の状態などをチェックしましょう。

  • 注射部位を触って確認
     腫れやしこりが数週間以上残る場合は病院にご相談ください。

  • 激しい運動は控えめに
     翌日以降は散歩や遊びも可能ですが、数日はハードな運動は避けて徐々に普段通りに戻していくと安心です。

  • 免疫がつくまで油断しない
     ワクチンを打ったからといって即日免疫が完成するわけではありません。病気への抵抗力がつくまで2週間前後かかりますので、それまでは感染リスクの高い場所(人や犬猫が多く集まる場所など)への接触は控えるようにしましょう。

4. 異常が見られたときの対応

次のような症状が出た場合は、速やかに動物病院にご連絡ください。

  • 顔や口周りの急な腫れ

  • 呼吸が荒い、苦しそうにしている

  • 繰り返す嘔吐や下痢

  • 意識がもうろうとしている

  • 高熱が続く、ぐったりして動かない

特に接種後数時間以内の異常は、アレルギー反応の可能性があるため一刻を争うケースもあります。「少し変だな」と思ったら、ためらわず受診してください。

尚、重度のものは接種直後に起きることが多いです。

最後に

ワクチン接種後の過ごし方についていろいろと書いてきましたが、実際に重篤な副反応が起きる確率は高くないため、過剰に心配する必要はありません。

不安は獣医師に解消し、接種後無理させない、よく注意することで安全な予防医療を行ってください。

 

 

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