飼い主として知っておきたい「動物愛護法」

ファミリー動物病院 > コラム > 飼い主として知っておきたい「動物愛護法」

大切な家族を守るために

皆さんは「動物の愛護及び管理に関する法律(通称:動物愛護法)」をご存じでしょうか。
犬や猫をはじめとするペットを飼うとき、私たちは「飼い主」としての喜びと同時に、法律上の「責任」も負うことになります。

この動物愛護法は、動物を適正に扱い、命を尊重する社会をつくるために定められた法律であり、動物に対する人間の行動指針ともいえる大切なルールです。

ここでは、動物病院の立場から、飼い主の皆さまにぜひ知っておいてほしいポイントを分かりやすく解説します。

1. 動物愛護法の目的

動物愛護法の正式名称は「動物の愛護及び管理に関する法律」です。
第一条に目的が定められており、

この法律は、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵かん養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止し、もつて人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的とする。

となっています。
何かよくわかりませんね。
この法律で定めるルールは下記二つを目的にしています。

  • 動物を愛護する気風をつくって、生命の尊重や友愛、平和の情操の涵養(かんよう→無理のないようだんだんに養い作ること)に資すること。
  • 動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害と生活環境の保全上の支障の防止。

これら二つによって「人と動物の共生する社会の実現を図ること。」を最終的な目的にしています。

つまり、「かわいいから飼う」ではなく、「命を預かる責任」を自覚し、「共に生きる」。

終生にわたって適切に飼養することが求められています。

この法律は、犬猫だけでなく、鳥やウサギ、フェレットなど、人と暮らす多くの動物に適用されます。

2. 飼い主が守るべき義務

飼い主が守るべき義務は第七条に定められています。

条文は長いので割愛して、おおまかに下記にまとめます。

(1)終生飼養の責任

最も重要なのが「終生飼養(しゅうせいしよう)」の原則です。

飼い始めた動物は、寿命をまっとうするまで責任をもって飼う義務があります。

「引っ越しするから」「世話が大変だから」といった理由で手放すことは、法律の理念に反する行為です。

やむを得ず飼えなくなった場合でも、自治体や保護団体、譲渡先を探すなど、最善の努力が求められます。

(2)適正な飼養管理

動物が快適に過ごせるよう、その種類、修正に応じ環境を整えることも義務の一つです。

十分な餌や水、清潔な飼育環境、体調に応じた医療の提供など、動物の健康と安全を守ることが飼い主の責務です。

特に外飼いの犬の場合、天候や温度変化による体調不良、散歩不足によるストレスなどにも配慮が必要です。

また、過剰な繁殖の防止や感染性の病気に対する正しい知識を持つこと、その予防の為に必要な注意を払うことも求められています。

(3)逸走防止(いっそうぼうし)

犬や猫が外に逃げ出すことによる交通事故や咬傷事故を防ぐため、逃げ出さないような管理が求められます。

犬の場合は、リードの着用や柵の点検を怠らないこと。

猫も、一般的に完全室内飼育が推奨されています。(法律の規定で明言されているわけではありませんが)

損害の防止措置も明文で規定されていますし、他人に損害を与えた場合、民法上の損害賠償責任が生じることもあります。

3. 犬・猫の販売や譲渡に関するルール

動物愛護法では、ペットショップやブリーダーなど「販売業者」だけでなく、保護団体などのルールも定めています。

保護団体から動物を受け入れる飼い主もたくさんいらっしゃるかと思いますが、きちんとした団体であるかよく確認する必要があります。

4. 虐待・遺棄の禁止と罰則の強化

動物をみだりに傷つけたり、遺棄したりすることは法律で厳しく禁止されています。

法改正があり、罰則が大幅に強化されました。

例えば、犬や猫を殺傷した場合には「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」、虐待や遺棄をした場合にも「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」が科せられます。(四十四条)

動物病院でも、明らかな虐待や不適切な飼養が疑われる場合には、獣医師が通報を行うことが義務付けられています。(四十一条の二)

これは「動物を守るための法律」であると同時に、「社会全体で命を守るための仕組み」でもあります。

5. マイクロチップ義務化について

令和4年6月から、犬や猫のマイクロチップ装着が義務化されました。

販売業者から購入する犬猫には必ずマイクロチップが装着されており、飼い主がお迎えした際は手続きを行う必要があります。

すでに飼っている場合はマイクロチップの装着について「努力義務」とされていますが、迷子や災害時に飼い主を特定できる重要な手段です。

動物病院でも装着や登録のサポートを行っていますので、まだの方はかかりつけに相談されることをお勧めいたします。

※当院ではマイクロチップの装着は行っておりません。

6. 動物病院と法律の関わり

動物病院は、単に病気を治す場所ではありません。

健康管理や予防医療の実施を通じて、飼い主と動物の幸せな共生を支える「法律の実践現場」といえます。

動物愛護法では、「動物取扱業」や「獣医師」に対しても責務が定められており、私たちは日々、法の趣旨に基づいて診療や指導を行っています。

例えば、狂犬病予防接種の実施は「狂犬病予防法」に基づく義務ですが、これは動物愛護法の理念――つまり、人と動物の命を守ること――と深く結びついています。

動物を法的・倫理的に守ることは、最終的に社会全体の安全と安心につながります。

7. 飼い主としてできること

動物愛護法は「罰するための法律」ではなく、「守るための法律」です。

飼い主としてできる最も大切なことは、日々の小さな行動の積み重ねです。

  • 年に一度の健康診断やワクチンで、健康と命を守る
  • 飼育環境を清潔に保ち、ストレスを減らす
  • 登録・鑑札・マイクロチップなどの手続きを怠らない
  • 周囲の人や他の動物との共生を意識する

これらはすべて、法律が求める「適正飼養」に通じています。

まとめ

動物愛護法は、「動物の幸せ」と「飼い主の責任」を明確に示す法律です。

動物病院としても、診療や健康管理を通じてこの理念を広めていくことが私たちの使命だと考えています。

動物を家族として迎えることは、単なる趣味や癒しではなく、「命を預かる約束」です。

その約束を守るために、法律を理解し、日々の行動に生かしていきましょう。

皆さまが愛する動物と、長く幸せに暮らせるよう、私たちも全力でサポートいたします。

コラム一覧へ戻る