6月を過ぎてしまうと違法?狂犬病の接種時期のお話

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今年の狂犬病ワクチンは皆さんもうお済でしょうか?
大きな声ではいえないけど実はまだ…という方も一定数いるのでは。
過去、グループ院で調査をした結果、7月~3月と4月~6月の狂犬病予防接種数の比率はおよそ1:9でした。
普通の街の動物病院なので調査数としてはやや頼りないですが、まぁそんなもんだろうと思います。

狂犬病予防についての義務

ここで狂犬病予防法のおさらいをしておきましょう。
ざっくりというと下記の義務があります。

  • 生後90日を過ぎたわんちゃんをお住まいの自治体に登録すること*
  • 登録時に発行される鑑札を身に着けること*
  • 生後90日を過ぎたわんちゃんに狂犬病予防接種を毎年受けさせること
  • 狂犬病予防後に注射済票を発行し、身に着けること
  • 引っ越しや死亡等の変更手続きを行うこと

以上のことが狂犬病予防法に定められています。
*今はマイクロチップでOKというパターンが多いです。

狂犬病予防接種の時期

さらに深堀りして時期に注目してみましょう。
狂犬病予防接種の義務を定める狂犬病予防法の第五条については以下の通りです。
(法律の文章って読みにくいのでポイントを赤字にしています。)

(予防注射)
第五条 犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者。以下同じ。)は、その犬について、厚生労働省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせなければならない。
2 市町村長は、政令の定めるところにより、前項の予防注射を受けた犬の所有者に注射済票を交付しなければならない。
3 犬の所有者は、前項の注射済票をその犬に着けておかなければならない。

犬の所有者、というのは飼い主様のことですね。
この条文上は1年に1回という以上のことは記載がありません。
もう少し細かいことが狂犬病予防法施行規則十一条に書いています。

(予防注射の時期)
第十一条 生後九十一日以上の犬(次項に規定する犬であつて、三月二日から六月三十日までの間に所有されるに至つたものを除く。)の所有者は、法第五条第一項の規定により、その犬について、狂犬病の予防注射を四月一日から六月三十日までの間に一回受けさせなければならない。ただし、三月二日以降において既に狂犬病の予防注射を受けた犬については、この限りでない。
2 生後九十一日以上の犬であつて、三月二日(一月一日から五月三十一日までの間にその犬を所有するに至つた場合においては、前年の三月二日)以降に狂犬病の予防注射を受けていないもの又は受けたかどうか明らかでないものを所有するに至つた者は、法第五条第一項の規定により、その犬について、その犬を所有するに至つた日から三十日以内に狂犬病の予防注射を受けさせなければならない。

施行規則においては明確に「狂犬病の予防注射を四月一日から六月三十日までの間に一回受けさせなければならない。」とあります。
つまり6月30日までに予防接種を実施しなさいとなっています。
尚、但し書き「ただし、三月二日以降において既に狂犬病の予防注射を受けた犬については、この限りでない。」という例外がありますが、3月2日以降に予防接種を受けた場合、翌年度の注射済票が交付されます。

余談:狂犬病予防法の全体像

施行規則ってなんやねん、と思われる方もいるかもしれないのでざっくりとご説明します。
理由は置いといて、実は法律には全ての定めがあるわけではありません。
細かい部分について、政令で定める、省令で定める等、別のルールにお願いしていることがあります。
狂犬病予防法には政令と省令があり、順番に
狂犬病予防法
狂犬病予防法施行令(政令)
狂犬病予防法施行規則(省令)
という風に大きな所から細かい定めを作っています。
なので、これ全体でひとまとめのルールという感じです。

7月以降に打つのは違法?

これだけみると4月~6月以外に接種することは違法のような気がします。
(ただ、施行規則第十一条の2に定めるように、飼いはじめは別です。)
一方で、狂犬病予防法違反での検挙事例をちょっと調べてみると、基本「受けてない」という事例ばかりです。
これが何年間受けてないかというのは明確ではないですが、年1回受けていても予防期間外だから検挙!という事例はみつけられませんでした。
自治体のホームページなどを参照してみても、「過ぎても年1回は絶対打ってね!」みたいな感じの所が多い気がします。
とはいえ、法令の解釈についてはあまり無責任なこともいえないので、ノミダニフィラリアも考慮し、できるだけ4月から6月に合わせていった方が良い気がしますね。
一応、大阪市さんに確認したところ、期間外の接種について、「正確には違法」という回答でした。

ちなみに狂犬病予防法違反については毎年100件以上検挙されています。
ニュースになるのはブリーダーさんが多いですが、2020年に静岡では一般の飼い主様が書類送検された事例もあります。
報道されるのはインパクトのあるものばかりでしょうから、実際の個人と業者の比率などはよくわかりませんが…

誕生日の兼ね合いで7月以降に接種している場合

前述の施行規則第十一条の2の場合のように、初めての接種が予防期間外になることもありますよね。
その場合、狂犬病の接種間隔は概ね6ヶ月程度空けていただいた方がよいと思いますので、そのあたり考慮頂き、4月~6月に合わせていっていただければと思います。

最後に

狂犬病予防法は面倒なルールですが、違反には罰則があります。
これは、未だに毎年数万人の人が狂犬病で亡くなっていることからもわかるように、狂犬病が怖い病気である為。
にも関わらず知らないわんちゃんとも気軽に触れ合える「狂犬病清浄地域」という世界でも稀な環境を作るために政府、国民一体となって頑張ってきた結果を守る為です。
今後も当院では啓発活動や実際の接種を通じて、狂犬病のない世の中に貢献できるよう努めてまいります。
皆様も是非1年に1回、必ず予防接種のご対応をよろしくお願いいたします。

予防接種イベントの詳細についてはこちらをご確認ください。

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