ノミ・マダニを予防しなかったらこんなことに!予防・対処まとめ【獣医師監修】
ノミ・マダニ、身近にいるけど意外と知らないですよね。
実は、めっちゃ怖い虫です。
毎年、フィラリア予防と同時期に開始するノミ・マダニ予防について理解していきましょう。
まずノミについて
ノミとは、黒ゴマほどの大きさで、縦に平べったい、動きの素早い6本脚の昆虫です。
バネのような脚を持ち、大変、跳躍力のある昆虫で、自身の体の150倍(!)もの高さを飛ぶことができます。
よって、散歩している犬の体にも余裕でジャンプして寄生することができます。
他の犬や猫とのコミュニケーションでも広まっていきます。
犬の皮膚に寄生すると、すぐに吸血を開始し、そして毎日約50個(=1カ月約1500個)産卵します。
産まれた卵は、犬の体表面から部屋のあちらこちらに落ち、やがてふ化します。
ふ化した幼虫は、さなぎを経て成虫になります。
その期間は、わずか2週間から1か月ですので、どんどんノミが繁殖し増えていくことになります。
想像をはるかに超えるスピードで繁殖します。
ノミの成虫は、犬や猫の体に寄生し、吸血します。
ノミの幼虫や蛹は、体に寄生して吸血はしませんが、普段過ごしている生活環境などに住み着いて、成虫に成長していき、寄生の機会を狙っています。
環境中の全ノミの5%が犬や猫の体表面に寄生するノミの成虫で、残り95%がノミの卵、さなぎ、幼虫です。
ノミが寄生すると?
ノミが寄生すると、犬の体表面を動き回り、吸血します。
そうすると、犬は激しい痒みに襲われます。
また、激しい痒み自体が、ストレスになることもあります。
ノミに対してアレルギー体質の犬は、一か所刺され吸血されただけで、全身が痒くなります。
犬が体全身を搔きむしることによって、脱毛や湿疹などの皮膚炎が生じます。
掻きすぎて傷ができた場合は、そこに細菌が感染する危険性もあり、また、寄生数が大量であると、貧血になる場合もあります。
子犬の場合、大量のノミに吸血されると貧血を起こし、命を落とす可能性があります。
ノミの駆除に関しては、なかなか一筋縄にはいきません。
ノミの成虫を駆除しても、生活環境に卵、幼虫、さなぎが残っていることが多いので、それらが成虫になると何度でも感染を繰り返します。
ノミの寄生による病気
・貧血
ノミに大量寄生されると貧血を起こします。
・ノミアレルギー性皮膚炎
吸血時、犬の体内に入るノミの唾液成分に過敏に反応し、アレルギーが引き起こされます。
全身の激しい痒み、紅斑、発疹、脱毛などが認められます。
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミ1匹に吸血されても起こります。
・瓜実条虫
通称サナダムシと言われます。
ノミの体内に瓜実条虫(サナダムシ)の幼虫が潜んでいる場合、間違ってそのノミを食べてしまうと、瓜実条虫が感染してしまいます。犬は、痒いため、体中を舐めたり、噛んだりしますので、簡単に感染が成立します。
・バルトネラ病
「猫ひっかき病」とも呼ばれています。
この病原体は、ノミを介して犬猫に感染しますが、特に症状がでるほど悪さはしません。
しかし、人の場合は、発熱、傷口の化膿、リンパ節の腫脹などが見られます。
この病気に感染している犬や猫に引っ掻かれる、あるいは噛まれることで人に感染します。
リンパ節の腫れは時には鶏のたまご大になることもあるとか。
マダニについて
マダニとは、布団や畳にいる小型のダニと違って、目で確認できる大型のダニです。
8本脚で活動するクモの仲間で、卵から孵化すると、幼ダニ、若ダニ、成ダニと脱皮を繰り返して成長します。
ノミと違って、マダニは、成虫になる過程の、幼ダニや若ダニでも成長するため吸血をします。
吸血期間は、数日から長いもので10日間以上にわたり、吸血前は、4mm程度だった体が、吸血すると10mmくらいの大きさまで膨れ上がります。
胴体の10倍以上の大きさになる場合もあります。
また、吸血して体が膨らんだマダニは、黒いイボのように見え、それを無理に引きちぎるとがっちりとかみついたアゴの部分だけが皮膚に残り、皮膚の化膿や腫れを引き起こしてしまうことがあるので、慎重に除去する必要があります。
近年は、山林や野原のみならず、街中の公園、街路の植え込みや草むらにも生息しています。
そして、草むらなどに潜んでいるマダニは、寄生する機会をうかがっています。
マダニ独特の感覚器官で、犬や猫の体温やニオイ、振動、二酸化炭素などを感知し、そして、通りがかった犬や猫に飛び移って、体表に留まり、皮膚の柔らかい場所に移動し、吸血を開始します。
マダニに吸血されても、ノミとは違って、激しい痒みが見られないため、その寄生の発見が遅れる場合が多いです。
マダニによる被害は、大量寄生による貧血、バベシアや猫ヘモバルトネラなどの病原体の媒介などが挙げられます。
また、人にも感染する「ライム病」や「Q熱」などの人畜共通感染症の病原体も媒介します。
最近では、マダニ媒介のウイルス病で、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が人に対する被害として有名です。
マダニ媒介による病気
・バベシア症
バベシア原虫が犬の赤血球に寄生することによって、発病します。
発熱、貧血、黄疸、血色素尿などの症状が現れます。
重篤化すると、死亡する危険性があります。
・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSウイルスは、2013年に国内で初めて、人への感染の報告がされています。
西日本、中高齢の方に多く見られ、マダニの活発な活動時期と同じ、春から秋にかけて発生が多いとされています。
人の死亡率は25~30%。犬の死亡率は30%ほど。
猫では、犬や人よりもさらに重症で、60~70%ほどと報告されています。
ちなみに国内では2013年~2023年まで毎年死亡者がでています。
ノミ・マダニの予防方法
ノミ・マダニの実態、身近なのに恐ろしいことがなんとなく伝わりましたか?
狂犬病やフィラリアと同じで、確実な予防が重要です。
予防法としては、まず、ノミやマダニのいそうな所を、できるだけ避けること。
次に、予防薬を投与すること。
予防薬(駆除も可能)には、経口タイプ、スポット(滴下)タイプ、首輪タイプがありますが、現在の主流は、経口と滴下タイプです。
経口タイプに関しては、滴下タイプと違ってシャンプーや雨など水に濡れても、その効果に変わりはありません。
しかし、内服後、血液中に薬成分が広がっていくため、効果を発揮するには、ノミやマダニに吸血されなければなりません。つまり、痒みが出る、あるいはノミアレルギーになる可能性があります。
一方、滴下タイプに関しては、犬の首の後ろの皮膚に滴下、塗布しますので、薬剤が皮膚に広がり馴染むまで、体を水に濡らさないようにする必要があります。しかし、吸血による効果発揮でなく、接触によるものですので、吸血による二次被害はありません。
予防を行うに当たっては、必ず、決められた投与回数、期間を厳守することが大切です。
自己判断せず、投与に関して気になるようなことが動物病院に相談してください。
また、経口タイプの場合は、投与後、吐き出していないかしっかり確認するようにしてください。
滴下タイプの場合は、処置後、皮膚につけた薬剤を舐めないように注意してください。
予防薬の違い
ノミダニの予防薬は微妙に適応範囲が違います。
下記の表も参考にしてください。
当院ではフロントラインプラスとネクスガードスペクトラを使用しています。
薬 | タイプ | フィラリア | ノミ成虫 | ノミ卵・幼虫・蛹 | マダニ | お腹の虫 |
---|---|---|---|---|---|---|
ネクスガードスペクトラ | おやつ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ネクスガード | おやつ | × | 〇 | 〇 | 〇 | × |
フロントラインプラス | 滴下 | × | 〇 | 〇 | 〇 | × |
レボリューション | 滴下 | 〇 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
投薬の手間やコスト面を考えてもネクスガードスペクトラのようなオールインワン予防薬がおすすめです。
医薬品ですので、安易に海外から個人輸入したりせず、必ず獣医さんにご相談ください。
ノミ・マダニの予防はいつからいつまで?
多くのノミやマダニは、気温が上昇する春先から秋にかけて活動しますので、暖かい時期の4~11月は特に注意が必要です。(近畿地方基準ですが)
しかし、一年を通して暖かい地域や屋内は、季節に関係なく、年中活動しています。
ノミやマダニは、気温が高い、あるいは暖かい室内にいる場合は、越冬し活動を続けますので、これらの生活環境に合わせて、予防を行う必要があります。
マダニに関しては、キャンプやバーベキューなど自然がある場所に連れていく機会が多い場合は、特に念入りに予防してください。
フィラリアと同様、年間で予防しておくのも良いかもしれません。
ノミ・マダニの対策について
気温の温暖化や暖房器具の発達した現代では、ノミやマダニは、1年中、繁殖することが可能です。
よって、犬や猫に限らず、飼い主さんやそのご家族が不快な思いをしないように、通年投与を推奨する動物病院も増えてきています。
このコラムを読んでいただくことによって、健康を脅かすノミ、マダニについて理解し、最適な対策につながると信じています。
当院では予防のハードルを下げ、ノミダニ等の寄生虫に苦しむ動物達を減らしたいと考えています。
活動の一環として、価格を抑えた予防イベントを提供しておりますので、是非ご活用ください。