【5種でいい?】混合ワクチンの予防メリットと価格や副反応などデメリット【獣医師監修】
混合ワクチンは動物間の感染症を予防できるお薬です。
法令上の義務はありませんが、動物が集まるドッグランやペットホテル利用には必須です。
どんなものなのか、詳しく解説していきます。
混合ワクチンとは?〇種って何?
ワクチンとはそもそも感染症予防に用いる医薬品で、感染症の原因となる病原体を無毒化したり弱毒化などして悪さしないようにしたものです。
これを体内に入れることで免疫を獲得でき、予防になるというものです。
狂犬病もワクチン接種で予防できますが、狂犬病ワクチンは狂犬病のみに対応しています。
混合ワクチンはいろんな病気に対応できるワクチンなわけです。
対応できる病気の種類が2種や5種などと表現されています。
そして、混合ワクチンにはコアワクチンとノンコアワクチンと言われるものがあります。
これは重要度によって決められており、コア(=全てのわんちゃんが接種すべき)、ノンコア(生活環境によっては接種した方がいい)です。
そして、5種以上になるとコアワクチンは基本的に網羅されているかと思います。
下記に簡易的な表を記載します。
【参考】上記の病気についてはこちら
尚、動物病院によって取り扱っていないワクチンも多くあります。
基本的にはわんちゃんであれば5種、7種がスタンダードでしょう。
当院ではわんちゃん5種、猫ちゃん3種を接種しています。
どのワクチンを接種すればいい?
混合ワクチンは義務ではなく、明確な回答は難しいです。
例えばワクチンで予防できる病気にレプトスピラ症という病気があります。
これはノンコアワクチンで予防する病気です。
わんちゃん同士(というか感染した哺乳類との接触)でも感染しますが原因の病原体は基本的に土壌の中にいて、汚染された土、水との接触で皮膚や粘膜から感染します。
当院のある大阪市は殆どがアスファルトで舗装されていて、正直あまり土との接触はありません。
そういう意味では大阪市の都心で暮らしているわんちゃんは感染機会も少ないです。
一方、少し大阪市を外れて茨木市の山の方に行くと田園風景が広がり、気持ちいい空気の中のお散歩ができます。
あぜ道を歩いているわんちゃんはすごくかわいい光景ですが、常に田んぼのやわらかい土壌に触れており、感染リスクが上がってしまいます。
上記のように生活環境や習慣の違いで感染リスクに差が出てくるのがわかっていただけると思います。
コロナワクチンで記憶に新しい通り、予防医療とはいえワクチンには副反応もあります。
その子の事をよくわかっている獣医師さんに相談し、メリットとデメリットを比較して接種するワクチンを決めるのが理想だと思います。
副反応が出ないようにするには?出たらどうなる?
副反応は完全に防ぐことはできません。
というか、大なり小なり出るものだと思っておいてください。
基本的には人間と同じでワクチンを打ったら2、3日安静にしていてください。
シャンプーも避けておく方が良いです。
接種後24時間以内、特に3・4時間以内は副反応が出やすく、重篤なものは30分以内に出ることが多いです。
なので、とりあえず打ったらしばらく病院で待機するのがおすすめです。
家に帰ってから下記のような症状が出た場合、気になることがある場合もすぐ病院に電話した方が良いです。
- 昏睡/ぐったりしている
- まぶたの裏、口腔内など眼に見える粘膜が青白くなっている
- 呼吸が苦しそう
- 嘔吐/吐き気がある
- ふらつく、ぐるぐる回る
- 顔が腫れる/じんましん
ともかくしばらくはいつも以上によく観察してあげてください。
混合ワクチンの場合は狂犬病よりやや高い0.6%で何らかの副反応が発生するといわれており、重篤なものの場合は死亡するリスクもあります。
発生した場合の初期治療が大事です。
尚、緊急を要する副反応が発生した時に接種した病院が休診で他の病院にかかる場合は下記事項を伝えるのが大事です。
- いつ(何月何日何時頃に)
- どのワクチンを接種したか(具体的な名前がわかると良いので接種時に確認しておく方が良いです。)
脅しましたが基本的には副反応のデメリットよりも予防できるメリットが上回るが故にたくさんの動物が接種しています。
変に怖がったり悩んだりするよりもまずは獣医師に相談する事が大事です。
ワクチンの価格
狂犬病ワクチンと異なりこれはホント病院によります。
料金表をホームページに掲載している動物病院であれば大体書いてありますが
概ね犬5種5,000円~7,000円、猫3種4,000円~6,000円らへんじゃないでしょうか。
種類が増えれば当然高くなりますが、安いからといってその子に必要な予防を減らしてしまうのはよろしくありません。
毎年打たないといけないの?年何回打つ?
まず最初、子犬の時は少し多めに打たないといけません。
基本的には生後2か月~4か月の間に2、3回接種し、抗体をチェックして基準を満たしていればOKです。
ペットショップでのお迎えの場合1回目は既に打っている場合が殆どかと思います。
猫も同じような感じです。
その後は年1回が一般的ですが、獣医師さんによっては抗体価次第という場合もあります。
獣医さんによって判断が異なるのは海外では3年に一回等毎年接種しない例も多いからです。
ただ、ここで考えなければいけないのは日本と欧米諸国ではそもそも混合ワクチン接種率が全然違うという事です。
海外では殆どの方が混合ワクチンを接種しているので一頭が感染してもそこまで広がりませんが、日本の場合は接種されていない方もまだまだ多いですから、爆発的に広がってしまう懸念も無きにしも非ず。
日本のわんちゃんのワクチン接種率は50%以下で、猫ちゃんはもっと低い。
近くに感染しているわんちゃん猫ちゃんがいても不思議はありません。
海外云々ではなく、身近な獣医師さんと相談して決めることが重要です。
尚、ホテル利用等の基準は1年1回になっていることが多いようです。
混合ワクチンを接種しないデメリット
最後に、混合ワクチンを接種しないデメリットについてお話します。
混合ワクチンで予防できる病気は、シンプルに危険です。
例えば致死率が高かったり、有効な治療薬がなかったり。
また、これらの病気に感染した場合、ペット保険が使えないこともあります。
ドッグランやペットホテル、お店によってはトリミングサロンなんかも使えません。
獣医師さんと相談したうえでやめておくという結論以外では、原則接種することを推奨します。
当院では、狂犬病ワクチンの他にも混合ワクチンの接種率向上にも取り組んでいます。
イベント形式で価格も抑えておりますので、お近くでの開催の際は是非ご検討ください。
【参考】混合ワクチンで予防できる病気について、簡単に
わんちゃんの病気
犬ジステンパーウィルス感染症
犬のウィルス病としては最も多く、感染した際の発病率・死亡率も非常に高い病気です。
治療法もなく、対症療法にて回復を期待するほかありません。
ワクチン接種前に感染してしまうと接種後でも発症してしまいますので、飼いはじめのワクチン接種が非常に重要です。
伝染性肝炎(アデノウィルス1型)
このウィルスは比較的強く、数カ月間環境中で生存することもあるほか、アルコールにも耐性があります。
発熱・元気消失から始まり、血便・皮膚からの出血が起こることもあります。
全体の死亡率は10%ほどとジステンパーに比べれば低いですが、子犬の死亡率は高く、油断していいものでもありません。
アデノウィルス2型
ケンネルコフと言われる伝染性喉頭気管炎の原因になるウィルスです。
その名の通り咳が出たりしますが、このウィルス単体では重篤な症状になることは殆どありません。
一方で感染した犬の飛沫を浴びることで容易に感染し、細菌への二次感染で肺炎を引き起こすことがあります。
アデノウィルス2型だけが原因の病気ではないですが、パラインフルエンザと併せての予防で大部分を防ぐことが可能だと言われています。
パルボウィルス感染症
このウィルスは非常に強く、ちょっとやそっとの熱やアルコールでは死滅しません。
また、環境中でも数カ月以上生存し、人の靴に運ばれたり容易に身近に迫ってきます。
これも治療法がなく、全体の死亡率は5%ほどと高くないものの、無治療の場合は90%程。
感染した場合は早期発見が重要になりますから、これも予防しておくべきでしょう。
パラインフルエンザ
インフルエンザとは何の関係もないウィルスで、アデノウィルス2型と同じようにケンネルコフの原因になります。
こちらも感染力が強く、人のインフルエンザのようにコロコロ変異するので定期的なワクチン接種が必要です。
わんちゃんが集まる所に行く場合など、アデノウィルスとセットで特に気を付けるべきかと思います。
猫ちゃんの病気
猫ウィルス性鼻気管炎
猫ヘルペスウィルスへの感染により、いわゆる猫風邪とよく言われる症状になります。
有効な治療薬はなく対症療法での対応となりますが、人のヘルペス同様体に居ついて、免疫が下がった時に再発することも。
また、症状はなくとも他の猫にうつすこともありますので、全ての猫が予防を受けるべきかと思います。
カリシウィルス感染症
これも猫風邪と呼ばれたりするものです。ヘルペスウイルスとの大きな違いは舌や口腔内に潰瘍などができることです。
口内炎ができた時のことを想像していただければわかると思いますが、これが食欲低下の原因になることも。
また、回復後でも数カ月間、場合によっては生涯ウィルスを排出することもあります。これも予防しておくべき。
汎白血球減少症
猫パルボウイルスに感染して起こる病気です。猫用としては最も古くからワクチンで予防できています。
子猫~若い猫が発症しやすく、伝染力も非常に強い、他の病気にも弱くなる、死亡率も低くありません。(子猫は90%ほど)
人間が運んでくるので完全室内飼いでも発症例があります。命を守るためにワクチンで確実に予防しておくべきです。